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IWC パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア 39mmのSS製・純パイロットウォッチ。





レビューのためにこの時計を受け取り、価格を再確認して最初に思い浮かんだことは、IWC パイロッ卜・ウォッチ・オートマティック・スピットファイアはこのうえなくお買い得だということだ。ギアを入れ替えて、The Value Propositionの記事として書こうかと考えたほどで、そっちの企画でも通用すると思ったからだ。個人的にもIWCについて書くのはワクワクするのだが、2000年代半ばに時計ジャーナリストとしてスタートしたばかりの時代に戻れる気がするという理由もある。その頃私が、IWCについてよく評していたことは値段相応の価値があるということだ。結局のところ、IWCは時計の世界に初めて手の届く値段のスプリットセコンド クロノグラフと、比較的手頃なグランド・コンプリケーションを世に出したブランドなのだ。
 初期から存在していた実用的なスタイルが、本機には特に現れていると感じる。新品 IWCパイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイアの価格はわずか54万円(税抜)で、この値段で実にたくさんのことを手にすることが可能だ。


 60万円未満の価格で、新たな自社製オートマティックムーブメントであるCal.32110が手に入り、またそれには時計愛好家をして驚きの72時間パワーリザーブまで備わっている。ムーブメントは、シリコン製ガンギ車とレバーも搭載。3日間パワーリザーブを用意したのは、同社が、複数の時計を所有する人に向けて、日付や時刻をリセットすることなく時計を着け換えるシーンを想像したからだろう(そうは言っても、この時計こそ私がいつも着けていたい時計なのだが)。


テキスタイルストラップを部分的に取り外すと、頑強なケースバックが現れる。

 もちろん、新しいムーブメントは目にできない。裏蓋はクローズドで、軟鉄製インナーケースがムーブメントを包み込み、日常生活における磁場からそれを保護している。鉄製インナーケースで機械式ムーブメントを保護するこの方法は、IWCがパイロット・ウォッチおよびインジュニアコレクションで長年用いてきた実績のあるものであるが、いくつかのブランドから耐磁性ムーブメントがますます発表される時代には、この方法は少し時代錯誤になってきたような感がある。とはいえインナーケースを採用しながら、本機の程良いケース径や厚みには満足している。裏蓋についていえば、クローズドで問題ない。スピットファイア・オートマティックは、紛れもなくヴィンテージの魅力を備えた時計であるが、私にとっては、裏蓋は全体の一部に過ぎない。ただし、もし穴あきタイプのラグだったら...この時計はほぼ完璧にだったと思う。